Ueno Layered Row-Houses / Ueno, Taito City, Tokyo
[ Landscapedesign / House / 2024 ]
本計画は、上野桜木地域に位置する重層長屋の庭の設計である。
隣家の庭をはじめとする既存の街並みの余白を活かした建築配置によって、都市の共有資源として新たな庭が創出された。
庭は単に敷地内で完結するものではなく、街全体との関係性を持ち、都市空間との連続性を意識した計画により、豊かな環境が生まれる。
すなわち、敷地を超えて街全体と有機的な関係を築く庭のあり方を模索した。
江戸時代初期、上野の山に寛永寺が建立されたことを契機に、この地域は多くの寺院が集まり、江戸近郊でも有数の寺町として栄える。
現在も70以上の寺院を有するこの寺町には、石屋や花屋など寺院関連の老舗が多く集まり、独特の歴史的景観を形成している。
そこで、周辺の石屋から端材の石を調達し、土地と接する素材として活用することで、人々が集い憩う場所を創出する。
この庭は、寺町としての歴史的景観を取り入れつつ、敷地内外の空間的連続性を維持し、地域の文脈に寄り添うデザインを実現している。
植栽計画においては、常緑樹を基調とし、アクセントとして色づく落葉樹を組み合わせることで、隣地との視線を柔らかく遮りつつ、街の景観に寄与する構成とした。
また、動きのあるグラス類や四季折々に花を咲かせる草本、実をつける果樹を取り入れ、日常に寄り添う庭を目指している。
Architecture: 川島範久建築設計事務所
Photo: Jumpei Suzuki